肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎(五十肩)

 

肩関節周囲炎とは、肩の痛みと運動制限を伴う疾患の総称です。40歳以降に起こる、肩関節周囲の炎症や拘縮などの症状のことで、五十肩とも呼ばれます。肩関節周囲炎は原因がはっきりしない病気で、放っておいても自然に治ることが多いですが、痛みが収まったら出来るだけ早く動かすことで回復が早くなります。

 

 

肩関節周囲炎の症状

 

肩関節周囲炎は五十肩とも呼ばれる病気で、肩関節の周りに痛みが起こったり、肩がこわばったり拘縮したりして動かしづらくなるのが主な症状です。肩関節周囲炎の症状が収まって、ほぼ元通りに動かせるようになるには、軽くて6ヶ月程度、重ければ2年程度かかることもあり、症状と時期によって、急性期・慢性期・回復期という3つの段階に分けられます。

 

@急性期

肩関節周囲炎の急性期は痛みが強い時期です。炎症が強く鋭い痛みがあり、その痛みが筋肉を痙攣させてしまうため、さらに痛みが強くなってしまいます。腕を動かした時だけでなく、安静にしていても強い痛みがあり、眠れないほどの場合もあります。

 

A慢性期

慢性期は肩が動かなくなる時期です。急性期が過ぎると痛みは治まってきますが、今度は筋肉が拘縮して肩関節が動かなくなるという段階になります。慢性期になると、急性期のような安静にしていても痛むようなことはなくなりますが、肩関節の動きは制限され、ある段階以上に動かすと痛みが伴います。そのため日常生活に支障が出ることが多くあります。

 

B回復期

回復期は今までの症状が自然に収まって行く時期で、痛みも関節の拘縮も徐々に回復に向かっていきます。この段階になると、運動制限も次第に回復し始め、痛みも改善していきます。

 

 

肩関節周囲炎の原因

 

肩関節周囲炎は、原因がはっきりしない肩関節周辺に起こる炎症と拘縮の総称であり、40代以降に多く発生します。肩に痛みが出る病気には、この他にも健板断裂や石灰沈着性健板炎などがありますが、これらの原因がはっきりしているものは肩関節周囲炎からは除外されています。

 

肩関節は、肩甲骨・上腕骨・鎖骨という3つの骨から成り立っていますが、上腕骨頭が入っている肩甲骨関節窩はとても浅く、可動範囲が大きい代わりに脱臼しやすい構造になっています。そのため、肩関節は靱帯だけでなく健板や滑液包、筋肉と何重にも重なった組織によって支えられています。

 

肩関節周囲炎では、靱帯や健板が炎症を起こしたり、これらと筋肉などの組織の間に炎症を起したりすることがあります。また、関節を滑らかに動かしたりクッションの役割をしている滑液包が弾力を失ったり炎症を起こすこともあります。

 

肩関節は多くの組織で構成されているため、肩関節周囲炎には様々な病態がありますが、肩関節にある靱帯や健板、筋肉、滑液包などが老化したり炎症を起こすことによって起こると考えられています。肩峰下滑液包や関節包という滑液の入った袋が癒着すると、さらに関節の動きを悪くしてしまいます。

 

 

肩関節周囲炎の検査と診断

 

肩関節周囲炎の診断では、問診や肩関節を動かしながらの診察などで、痛みの起き方や肩関節の状態を把握します。次に、原因がはっきりしている健板断裂や石灰沈着性健板炎などを除外するためにレントゲン撮影を行います。レントゲン撮影では、部位や症状によってはストレス撮影という負荷をかけての撮影も行います。

 

また、肩の痛みは狭心症や心筋梗塞、胆石症などで起こる可能性もありますので、それらを除外するために必要な心電図検査や超音波検査なども必要があれば行います。

 

詳しい診断のためにはMRIの撮像を行い、骨や靱帯、腱、筋肉などの状態を詳しく見て、痛みや運動制限の原因を調べます。肩関節周囲炎の場合には、こういった検査による特異的な所見が無いのが特徴であるため、はっきりした原因の特定が困難なことが多いです。

 

 

肩関節周囲炎の治療法

 

肩関節周囲炎は、ほとんどの場合自然に治っていきますので、主に痛みに対する対症療法を行いながら、痛みが治まってきたら徐々に動かす訓練をするという保存的治療を選択します。ただし、いつまでも症状が残って改善しない場合や、あまりにも痛みがひどい場合には、手術による治療を選択する場合もあります。

 

@保存的治療

肩関節周囲炎の治療は、その時期によっても対応が違ってきます。まず急性期には、とにかく安静と痛みをとることが重要となりますので、できるだけ肩を動かさないようにして、消炎鎮痛剤の服用と関節腔内注射、ブロック注射などによって痛みを取る治療を行います。安静にしていても眠れないほど痛みがひどい場合には、就寝時に腕の下に枕やクッションを挟むなどして腕の重さが肩にかからないようにする工夫も有効です。

 

慢性期になって痛みが和らいでくれば、温熱療法で温めることと、徐々にリハビリテーションを始めて肩の可動域を広げることが主な治療となります。日常生活でも肩を冷やさないように注意することや、入浴でよく温めたり、サポーターで保護したりといったことも有効です。

 

回復期には、肩に過度の負荷をかけないように注意しながらリハビリテーションで可動域を広げ、元通りに動かせるようになることを目指します。全期間にわたって言えることですが、肩や腕にできるだけ負荷をかけないようにすることはとても大切です。重いものを持ったり、腕に急激に力が加わったりするようなことは避けるようにすることが大切です。

 

A手術

肩関節周囲炎に対して手術を選択することはあまりありませんが、ある程度の期間がたっても症状が改善せずに慢性化し、さらに手術によって症状が改善できると判断された時には行います。実際に行われている方法には、関節鏡視下授動術と麻酔下徒手的授動術とがありますが、ほとんどの場合これらの方法を併用して行います。

 

・関節鏡視下授動術

全身麻酔下に関節鏡を用いて、癒着して小さくなっている関節包を切離して広げていく手術です。関節鏡を用いますので、小さな傷口での手術が可能です。

 

・麻酔下徒手的授動術

関節鏡下に関節包をはがした後、全身麻酔下に医師が肩関節に力を加えて動かし、徒手的に硬くなった関節包を伸ばして動きやすくする方法です。

 

また、これらの手術によって得られた可動域をしっかりと残すためには、術後に1ヶ月程度のリハビリテーションが必須となります。これを怠ると、術前よりもかえって悪くなる場合もありますので注意が必要です。